「東京ゴッドファーザーズ」

何かが惜しい秀作。
今敏氏は漫画家としてデビュー後、大友、押井関連その他でアニメーションの演出に関わり、「パーフェクト・ブルー」「千年女優」といった作品で監督を務め、世界的に注目されつづけている。らしい。
千年女優」は未見なのだけれど、「パーフェクト・ブルー」からは確実に映像表現として進化している。東京の裏町の描写は素晴らしい。絵の構図、レイアウトもいい。アニメーション表現のちょっとした技も抑制が利いており、これみよがしではなく的確につかわれている。声優ではない主役3人の演技もとてもいい。女子高校生役の岡本綾というひとが意外になかなかいい。音楽は鈴木慶一ムーンライダースバージョンのベートーヴェンの第9がエンディング。なかなかいい味を出している。それらがけっこう調和している。とんでもなくよくやっているじゃないか。
惜しいのは、ホームレスが主人公、とっぴな話し運び、悪くない。テンポもいい・・・ちょっとよすぎやしないか。ふたりのセリフがかぶるところなんか、とてもいい。しかしもうちょっと弛緩している時間、整理されていないような時間が入ればいいのに、という気がした。カットの時間配分がきれいすぎるのかな。
あと、惜しいのはちょっとだけだが人が良すぎるというか・・・。軽快な味わいはそのままで、もうすこしつっこんで類型的ではない部分が欲しい気がした。アニメーションの自由さと、実写的なリアリティのバランスはかなり絶妙なところまで来ている。バランスは取れすぎているのかな。ほんの、もう少しなのだけれど。