「棒がいっぽん」

棒がいっぽん (Mag comics)

棒がいっぽん (Mag comics)

高野文子作品の再読がつづいている。これは短編集。
初期2作に比べると地味な印象だったが、これはこれで奇想天外・・・ということばはふさわしくないかもしれないが奇想のものもあって、そういえばこういう作品集だったなと思い出した。
端正な感じで、若干地味な印象の作品、見合い結婚の話しが2作あり、小津安二郎の映画のようでもある。読むと、私の両親の世代はこれと地続きだな、ちゃんと見合いをやったようでもなかったけれど、似た空気の中で結婚を考えていたはずだ、などと思えた。
そうした結婚についてどうのこうのはともかく、この2編は瑞々しく美しい。今はもうこの空気とは地続きではないようでもあり、その違いの決定的な要素が何か気になる。ただ、高野文子氏の作品をいろいろ読んでいくと、地続きでないのは私であって、現在にこの空気が存在していないわけではない気もしてくる。
奇想・・・という表現が適当かどうかわからないが、そういう数編は、私にはやっぱりまだ写実的な(?)作品ほどはすんなりうまく読めない。が、以前(もう10年になっているかもしれない)より面白く感じられた気がする。これを買った頃は忙しかったかな・・・。表題作は、私にはなぜかストロガツキー兄弟の作品(と、いっても2作しか読んでいないが)を思わせた。感覚、知能が揺さぶられる。
しかしなんだろうな、この人は。やっぱり天才なのか。