「もののけ姫」

もののけ姫 [DVD]

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突然、宮崎駿の大作について。


私は中学生くらいから宮崎駿氏の影響を強く受け、それでいまの私があると言えるくらいなのだが、もはやそれほど熱心に追いかけているわけではない。しかし気になるし、一応は見る。「ハウルの動く城」はまだ見ていないが。


そして、宮崎駿の代表作は「もののけ姫」だと思う。最高傑作は「天空の城ラピュタ」だとか「となりのトトロ」だとかいう人もいるかもしれない。まあ、最高傑作とかは、とりあえず、いいんだけれど、どれが最高とかいうのではなく、私にとっての、アニメーション映画監督宮崎駿の代表作は「もののけ姫」だと思う。


そんなこと、たいして意味はないか。


宮崎駿は今までの人生のなかで最も心酔したひとりでありつつ、それが最も醒めたひとりでもある。それでも嫌いではなく、大変関心のある表現者のひとりには違いないのだが、今は分析対象という感じだ。共感は半ば過去の話し。昔も今も、敬意はあるが。
もののけ姫」以降の宮崎駿氏のアニメーションへの距離の取り方を考える時、もともと懐疑的な発言が氏には多かった様な気がするが、必ずしも悪い意味ではなく、終わった感じがある。あとはアンコールピースといったような。本人も「もののけ姫」でやめるといっていたくらいであって、そのことを聞いていたせいもあるかもしれないが。


何書いてるんだろう。


もののけ姫」は、作劇構成上破綻していると言っていた人もいたような気がする。いわゆる起承転結といった構成感に乏しいといったような意味だろうか。ある意味ではそれは正しいだろうし、そうではない気もする。音楽のソナタ形式というのが、案外優れたものだな、と、最近思い始めたし、実際優れているのだろうが、そのような範疇に納まらない、別の原理による構成はいくつもあるはずで、それぞれ面白いものがあるはずだ。
そういうような意味で、「もののけ姫」もある種のロジックで貫かれている気がする。それはむしろこの作品を高く評価できるポイントになりそうだ。


もののけ姫」の舞台や、テーマ、現代の日本の社会生活からは遠いものだ。しかし、焦燥感、息苦しさ、走り続けなければならない感じなどは、身に覚えがある気がする。アシタカのようには清々しく生きられはせず、むしろ逆に鬱陶しく生きているが。「世界のミヤザキ」を、この頃から決定的にしていった記念碑的作品でもあると思うが、何故こんなにも重苦しいか。


作家宮崎駿の代表作はマンガのほうの「風の谷のナウシカ」かも知れないとも思うが、やっぱり「もののけ姫」かな。宮崎駿というひとの怨念はこちらのほうに、より結実しているようにも思える。
昔「アニメージュ」誌上のインタビューでドタバタしていたような感じもあった宮崎駿の作品、言動に、随分影響を受けた。それは時には悪い形で出た。というのは、才能も、それ以上にバイタリティーもないのに、表現することについて拘り、それだけならまだいいが、時にひとに押しつけもしたのだ。と、いうのはどうでもいいが、最近のインタビューを読んではいないが読もうという気持ちも薄れていて、それが微妙にさびしくもある。なにか、オシャレかもしれない最近の風貌は、どうだろう。
楽しいのかなあ。宮崎さん。


などというようなことを、ときどき、いろいろ、ふっと思うのだ。