「エマ」

エマ (7) (Beam comix)

エマ (7) (Beam comix)

読んじまった。
話題のマンガなら何でも読むというわけでもないが気にしてはいる。


装幀の独特なたたずまいがまず目を引く。しかしこのひとのマンガにメイドが必ず出てくるようなのでちょっと退く。「やさしいからだ」の単行本の対談に登場していたので気になってくる。ここにもう一人登場していたのは上野顕太郎氏で、ついでにウエケン氏も気になってくるが、それはまた別の話。立ち読みしてみる。悪くなさそう。
短編の「シャーリー」のほうを買ってみる。なかなかいい。雇い主の酒場の店主の女性が、かなりいい。シャーリーと彼女の幸福な出会いは、自分のことのようにうれしい。
「エマ」も読み始めた。面白い。読み終えた。途中の期待が一番大きく、いくつかは裏切られたが、まずまず。


裏切られた部分は、読んだ人でないとわからない話になるが、エマがアメリカであっさり助けられたこと、まあ、行方不明になったのだから、しばらく放っておくわけがないのだから、おかしくはないか。子爵だっけ、男爵だっけ。案外あっけなかったな。エレノアのねーさんも思ったほどエキセントリックじゃなかったかな。
あと、最後の方で、エレノアをもうちょっとだけ細かく描いてほしかったな。この子はけっこう好きだった。ただ物わかりのいいだけではない、柔軟な感受性の持ち主じゃないかと思うのだが。エマを気に入った女性お歴々のお二人とも案外気が合いそうではあっても、それらはみんなエマのもので、結局メイドの子がある意味エレノアの最大の理解者のようだったり。それでも理解者がいるだけでも彼女は幸せか。いつかは少なくとも姉よりは幸せになれるかもしれない。
ともあれ、こうした不満は些末で、なんというか「しっかりとした話」を読むことが出来た満足感の方が大きい。なんか巨匠の風格すら感じる故に逆に期待が大きくなったための不満か。


どうしようもないことはどうしようもないのが、それが人間の生きてきて、今も生き続けている世界で、また、それを忘れないのがイギリスで、忘れるのが今の日本かしら。ぎゃふん。私も人の死を受け止められない人間だ。
そんな私などとは全く違い、フィクションの、どうにでもなる部分といいかげんに扱ってはいけない部分をかなり的確にとらえているようでもある。
輪郭をしっかり書くようなところ、絵柄はちょっと苦手かなと思っていたけれど、案外嫌な感じはほとんどなく、しっかりとした書き込みもうるさく感じず、特徴があまりないようで、似た感じの絵の人も思い出せず、こういう絵のうまさは私の得意分野ではないのが、逆に新鮮だった。


話題作はなかなかすごかった。