「コダマの谷 王立大学騒乱劇」

コダマの谷 王立大学騒乱劇 (ビームコミックス)

コダマの谷 王立大学騒乱劇 (ビームコミックス)

書店で表紙を見て気になっていたのだけれど、新刊で買う勇気がなかった。金もなかった。しょうがないと思う。でも、以前なら出てから半年間読まなかったことを後悔しただろうな。今はしょうがないと思う。

絵といい話といい大好物。

絵は、なんかそんなに個性的ではないような、ものすごく個性的なような。
思いだした人は、高野文子永島慎二岡田史子・・・いやさすがに岡田史子というのは・・・そのほかの二人は私が過去熱中した・・・。羽海野チカ二ノ宮知子・・・少女マンガの3大人気作家のうち2人だな・・・。互いに似ていない・・・永島慎二岡田史子は似ているかな・・・ひとばかり挙げてしまったか。
コマ割りも含め、大変高度なもののよう。
私は専門家なのでひとつひとつのコマの絵のうまさはわかる。上に挙げた全員の平均と匹敵する、と、書いたら書き過ぎか。二ノ宮知子の初期はともかく、今は大変上手く、ほかも大変どころか極めて上手く、最初の3人は絵画的な洗練があるし、羽海野チカさんはちょっと違うかも知れないが個性的で・・・そんな個性的なところが似ていると思ったのだろうから、互いに似ていないのか・・・。
コマ割りはわからない。ふつうの、3段とか4段でも、面白いものは面白く、「マカロニほうれん荘」が、ただの4段で、そんなことは全然気にならなかったことに気付いて逆にショックだった。コマ割りが単純な感じがしようと、「マカロニほうれん荘」の驚異的なリズム感は空前絶後のように思うが。そういう単純な割り方と違う凝ったコマ割りというのは、少年マンガでは石森章太郎石ノ森章太郎)が、さらに少女マンガのほうでは様々な作家が凝り過ぎなくらいに凝っていたようだけれど、どちらかというとそれに近いかな。でも、どちらがいいと言うことは全くなく、いつの間にか凝ったコマ割りでも全くそれを意識することなく読み進めてしまうようになってしまっていた私には、大変読みやすいように思えた。
なにより、ページをパラパラめくると、その絵柄にうっとりする。上記のマンガ家から連想されるより、ずっと少女マンガ趣味かと思われる方も多いかと思うが、より古典的なマンガの感じもあって、構図もおもしろくて、いいなあ。

話も・・・好き嫌いだけで言うと、「エマ」より好きだな。と、いうのは異国情緒に溢れているというか・・・。作者があとがきでホームズ、イギリスに凝って西欧風ごった煮ができたようなこと(こんな言い回しではない)を書いているし、「ビームコミックス」から出ている点でも「エマ」との比較は完全に的はずれではないにしても、やっぱりかなり違うのではあるが・・・。
「エマ」を出してしまったので書いてみると、共通点は趣味的であることかも知れない。「エマ」のほうがもっと狭い趣味(悪い意味では全くないし、突き詰めることで拡がっていってもいる)を突き詰めている感じがするのに対し、作者があとがきで書いていることとも関係があるのだが、もっと最初から広がりのある感じがする。その点では、私は「エマ」的なものより近しく感じる。
良し悪しではない。好き嫌いではこちらだが、「エマ」がすごいと思ったのは、自分と遠いもののすごさでもあったし。また、どちらも好きであるし。

どの雑誌に載ったのかと思っていたら、巻末に「個人出版物」として出たとある。びっくりした。
同人誌と言っていいのか、言っていいとしたら「げんしけん」のイメージでは全くないな。個人は同人ではないか。しかし「おたくかな」なんて名前のブログには、どちらも似合わない気もするが、まあいいか。