「のら」
- 作者: 入江紀子
- 出版社/メーカー: アスキー
- 発売日: 1999/07
- メディア: コミック
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入江紀子さんというひとに興味を持ったのはfjというニュースグループ(?)の中でほめられていたからで、ネット初心者であった私はニュースグループなるものがよくわからなかったのだが、インターネット版のニフティみたいなものというわけのわからない理解をしていた。それはどうでもいい。
あまり好きになれないタイプの絵、主人公の表情がそんなに豊かでなく、なんか小綺麗なイラスト的テクニックが興味を削ぐ感じと言ったらひどすぎるか、と、いうわけで読み返すことはなく、しかし何か印象深かったことだけは覚えていた。
しかし、この人の作品はずーっと、いつも、書店にあるなあ。プロだなあ。
主人公の性格が、作品の構成と密接に関係していて、主人公が放浪するので作品が広がりを持つ、この設定はすごいなあ、アイデア一発と言ったら悪い言い方に聞こえてしまうかも知れないが、しかし明快な発想が作品として生命を持って自ら動き出しているという感じがする。ひどい表現だが。
自由奔放な主人公の言葉そのものにはむかつくにしても、また、作者の鮮やかな人間の生への理解には、そう簡単に割り切られてたまるかという気持ちがあるものの、半ひきこもりの私にとって確実に薬になってしまう。日常の凝り固まった常識が腐臭を放っているようなことを、ばっさばっさ斬り捨てる。読み返して良かったものではあった。
当初竹書房の少年誌に連載というのはいくつかの意味ですごい。90年代前半、軽薄な時代にマンガの中でこんな風が吹いていたのだ。バブルの頃・・・ではないのか、崩壊したのはいつだっけ。
竹書房版は不完全らしいので小学館でちょっと掲載された物を含めてアスキー(現エンターブレイン)で99年に再刊された物が良さそうだ。