「少女ファイト」

少女ファイト(1) (KCデラックス)

少女ファイト(1) (KCデラックス)

少女ファイト(2) (KCデラックス)

少女ファイト(2) (KCデラックス)

「熱血スポコン少女マンガ」と、言ったら本当はちょっと違うが文字の通りではある。「熱血」と、「コン」が微妙に違うが
例によって、と、言ったら日本橋ヨヲコさんには悪いのかも知れないが、才能に溢れた天才的な人ばかり出てきて悩みまくる、気持ち悪い、というのはウソで、大変清々しい気持ちになるマンガ。しかし今回の設定は今までよりいろいろな意味でベタなのだが、ジャストミートでヒネコビタ中年の心もとらえる。


IKKIで連載していた「G戦場ヘヴンズドア」で妙に気になって、数号で同誌を買うのを止めてしばらくしてからコミックを買って読んだ。今パラパラめくってみたら暗い話しだったみたいだな・・・(人間的なものには記憶力が弱い)。この頃は独特の絵柄にまず惹かれた。実は単行本のすっきりとした装幀もポイントが高かった。デザイナーさんの力でもあろうけれど、この人にもセンスがあるんじゃないか・・・。
その後「プラスチック解体高校」「極東学園天国」と、集めてみたのだが、そこそこいい。なかなかいい。今ほど完成度は高くないが当時から(当初から)独特の描線、表現力。キャラクターの表情が豊かで自然だ。物語の破綻があったような感じがした(私には本当のところはよくわからないのだが)が、案外気にならない。このふたつは無茶苦茶な設定の学校を舞台にしたものだった。
G戦場ヘヴンズドア」は、マンガと作家の話だったような(記憶力が弱い)ので、体験的な要素で書くのかな、と、ふと、思った。と、すればバレーとか運動部活的要素で「少女ファイト」か。あとはけっこう今までのマンガのエッセンスを吸収している気がするが誰かの影響というのが、私には感じられず・・・。
なんていうか、みんなの無意識をすうっと吸収してはき出しているようなところがあるのか・・・。マンガ家さんたちの、また、なんか悪戦苦闘している普通の人たちのも・・・。


スポーツマンガ「少女ファイト」、今までより日本橋ヨヲコ的ユニークさに欠ける、と、いうことに、ヒョーロンカとか的にはなりそうだがおそらく全くそう言うことがなく、荒れ玉で威力のあったピッチャーにコントロールが付いてきたのに球威は衰えることなくますます三振の山が築かれてきた、と、いうような、印象を、受ける。
この描線のウツクシイこと、ロットリング丸ペンでマンガを描くようになった時代以降、太さの変化する描線は古くさいということになりそうだったのだが、このひとの場合はかえって新しい感じすらする。グラフィック的な要素を持っているのだけれどある種手塚の流れもあるのか・・・。手塚の描線も充分洗練されているものではあったが。
構図のおもしろさ。これにはスポーツの動きを立体的に表していくために進化した部分もあるとは思えるが、さらにおそらくコマ割りの自在さ(これも進化している?)とも組み合わさって、いままでよりさらにマンガとしてのリズム感、表現の豊かさがあるのではないか。コマ割りなどは私にはよくわからない世界だけれど、読みやすいのだ。そして、読まずにページを眺めてみると、すごく複雑だ。え、こんな絵の連続をどうしてこんなにすうっと自然に読めたのか・・・。
さらに物語的にも堂々とした話し運び(?)が感じられて破綻の予感がないな。かといって予測できるとかいう感じでもない。なにしろスポーツだから、何が起こるかわからないというか。楽しみだ。


すでに傑作だと思う。