「かむろば村へ」

かむろば村へ 1 (ビッグコミックススペシャル)

かむろば村へ 1 (ビッグコミックススペシャル)

鬼才、いがらしみきおの新作。帯には「大人のための、甘さ控えめファンタジー。」とある。

奇妙な僻村に移住してきたおそらく30少し前の、ぱっとしない・・・どころか現実をほぼ見失っている青年男子。とはいえいわゆるオタクではない。で、お金が嫌いとか何とか。そこから始まるいろいろ。

で、たぶんお金と言うことがこのマンガの焦点なのだ。
あとは生活と言うこと、仕事というものが、この村はいわゆる常識から逸脱しているのだが、物理的には(?)確固として成立しているらしい・・・ともいいきれないか・・・青年くんは違った逸脱をしていて、空想的な生活しか描けていない。

とにかくお金とは何だろうというようなことが、最近私にとって大幅にクローズアップされているものの、「お金とは何だろう」という言葉だとありふれた解答にうんざりさせられるような予感がしてくるし、今村仁司氏の「貨幣とは何だろうか」で、かなり満足してしまってもいる。
まあ、つまりは、お金とは「私にとって」何だろうというか、お金とどうつき合っていけるのか、というか。しかしこれは私にとってであると同時に、やはり社会でどうお金というものは動いて、働いてしまっているかということとはもちろん関係がある。
と、いうあたりに揺さぶりをかけてくれそうな予感がしている。

もうひとつは舞台が農村であること。「花園メリーゴーランド」、「リトル・フォレスト」を思い出した。どちらも傑作。「かむろば村へ」も、たぶん傑作だ。
通常の(?)都会の生活はあたりまえではないのだ。
ほかの2作とちがうのは「ファンタジー」であり、都会の日常との距離感が、二重になっている感じがする点だ。ほかの2作が一般的な「生活」のイメージに対して与える衝撃はストレートで大きい。「かむろば村へ」の「ファンタジー」要素は、どちらかというと衝撃をやわらげる方向にはたらいてしまっている気もするが、これからどうなるか、まだわからない。

あと、帯の、裏側のデザイン処理が面白かった。