「巨娘」

巨娘(1) (アフタヌーンKC)

巨娘(1) (アフタヌーンKC)

神戸在住」の作者木村紺さんの新作なのだが、同じ人の作品だと思わなかった。書店で見かけ、名前が似ているなあと思い、しかしこの表4の妙なヘタウマなようなギャグタッチの絵のふざけた感じは違う人だろうと、思った。「神戸在住」最終巻の帯にも紹介されていて、それも見たから、やっぱりあの木村紺なのだと思って買ったのだが、実際に読み終えてからやっぱり違うのではないかと考え直しさえした。枠外の手書き文字とか、ほかのひとがやらないことをそのまま続けているというのに。

なんかすごいです。暴力的。いままでの静けさ皆無。
神戸在住」は、繊細な美術女子学生の静かだけれど心情の激しさを秘めた日々、というとなんと下世話な書き方だろうとは思うがそういうものだったとすれば、そんな特殊な人ではなく普通の仕事をやっている巷間の片隅の人の話。しかしそのパワフルさがちょっと普通じゃない。あと、まあ、「神戸在住」と違って、「ギャグ」なんだろうなあ。

しかし、むちゃくちゃなようだけれど、実はリアルにこんなことがけっこうある気がした。ふつうの街の片隅にすごい人ってけっこういるものだし、そんな話しをデフォルメしたようなものではないか。いままであまりこんな感じの話しを作品にしようと思う人がいなかっただけのことで。と、いう点では今までの木村紺さんの作品の延長だ。
男女逆にしたらよくあることのようだし、マンガにするほどのことではないひどくつまらない話しになるはずだが、強いのが女性だとなかなか魅力的な話しになるのかもしれない。恋愛(?)に強引だとはいえ相思相愛だからな。いい話でもある?

男である自分が情けなくなるというスイッチさえ切れば、読むと元気になる。


しかし、表1の上部に拡がる「アフタヌーンKC」の文字は一体なんだ。と、いう大胆なデザインをしつつ、全体のデザインには凡庸な感じが漂う、不思議な講談社クオリティの装幀が妙に引っかかる。