「ブラブラバンバン」

ブラブラバンバン 1 (ヤングサンデーコミックス)

ブラブラバンバン 1 (ヤングサンデーコミックス)

映画化されたそうな。

それとは関係なく、私はこのマンガを最近このセリフでよく思い出す。
ブラスバンドでホルンを吹き、指揮もしてしまう主人公の女子高生、彼女が自分の才能について聞かれて、「自分は天才だと思っている」と、いう、思わず言ってしまう言葉。
才能って何だ。・・・読み返してみないと、この言葉が本当に「才能について」言っていたかどうかも、セリフの中身についても本当のところは思い出せないのだが。

私は彫刻を専門としていて、それなりの才能を持っていると思っている。ただ、それなりでしかないとも。でも、ふと、「思わず」「自分は才能があると思っている」などとひとり考えてしまう。たとえばデッサンの能力とか、あるいは独自の発想とか、それらのどれに関しても凡庸でしかないことは知っているにしても。凡庸だからこそ、か。凡庸な人としての自分なりの行き方についての、妙な自信。
音楽もやっていて、こちらに関しては才能がそれほどでもないことは火を見るようにわかる。それでも、なにか特殊な、自分にしかできないようなことがある気がしている。それについても、似たようなことをちょっと言ってしまったりする。はるかにひかえめな言葉の内容であるにしても。

どうやら特殊な才能、感受性を持っているこのマンガの主人公と、おそらく音楽のみならず、美術に関しても私の才能などは比較するほどのこともなく、また、ちょっとずば抜けたこのマンガの主人公さえも「世界」で、どれほど才能を発揮できるものか、という程度のものかも知れない。

しかし、その「思わず」自分をたのみにしてしまう感覚、これは基本じゃないか。
なんとなく。その直感はある意味言葉の正確さなどとは関係がなく、正しいのじゃないかと思う。



あとは、作者が必ず取り入れる性的な問題、これも極めて重要なことではないかと思う。
のだめカンタービレ」に通じるような通じないような芸術的なものへの衝動というか才能と表現のせめぎ合いの問題、その群像表現としても極めて切実なのだけれど、同時に生きていく上で切実なこと、その「両方が」描かれている事で、双方がより切実に心を打つかも知れない。

全般に荒い部分があるような気もするが、それは気にしません。