「この世界の片隅に」

この世界の片隅に 上 (アクションコミックス)

この世界の片隅に 上 (アクションコミックス)

こうの史代さんの現時点での最新作なんだろうか。

人間が生きるという事、どのようなひとと、どのような関係を結んでいくかについて、持っている感覚がなんとなく女性と男性でちがう気がしていて、特に高野文子さんとこうの史代さんのマンガを読んだ時にそれを感じる。女性は現実を受け入れる力があるが、男性は何かに頼らなければいられない、のか、と、思ったが、女性とか男性という問題ではなく、私とこのふたりのマンガ家さんの違いに過ぎないかも知れず、単に私が現実を受け入れられないためだけかも知れない。

しかし、高野文子さんにしろ、こうの史代さんにしろ、少し前の時代の夫婦を中心とした家族を描くときの鮮烈さというのはなんだろう。ひしひしと感じられる感情の流れ、感覚、空気、におい。
それが痛いほどに感じられるようなのは逆に自分の生活から実感というものが失われているためのようだ。それをさぐりたいが、おかしな生き方をしてきたために、私という人間にはそれはもう手後れのような感じもする。
と、いうように絶望する必要など、別にないのだが。

私はこの新しい作品がこうの史代さんのマンガの中でも特に好きだ。「さんさん録」が好きだが、こっちのほうがもっと(自分に)いいと、今は思っている。