「エマ」2

エマ 10巻 (BEAM COMIX)

エマ 10巻 (BEAM COMIX)

どうやら終了した様子。
で、何がネタバレになるかわからないが。
(まもなく読む予定の人は注意)


本筋の物語が7巻でいちおうの完結を見ていた。それは2年前。そのつづきもこの巻のはじめや末尾にあり、大団円を見る。
愛しの(?)アデーレ! (失礼)彼女の心が開かれる描写が読めたときのうれしさといったら!


7巻までも良かったのだが、8巻が出て、読めた時のうれしかったこと!
その後の、「スピンオフ」っぽい8、9、10巻の方が好きかも知れない。

エレノアが結構好きだったので、彼女のその後、やはり心がほぐれていく描写を読んだ時のホッとした気持ち。
ターシャの家族! こんなに陽気ではないが、私は地方都市の片隅の、他愛のない、貧しい家の出(?)だ。なにか翻弄されるように社会の片隅にある家族を描いてくれた事のうれしさ。


そして、何よりも私にとっては、このシリーズ全体の白眉は、8巻はじめの「夢の水晶宮」前後編だった。
表紙を見ただけで涙があふれてくる。精一杯生きる事のいとおしさ。
2巻で先生が亡くなったのがこの物語の最初の大きなショックだった。彼女の若い頃の、ほんとうに瑞々しい、かけがえのない記憶。
この物語は、彼女がいなければおこりえなかったとも言える。エマへの最初の後押し、それは彼女のこの思い出があったからこそ、だったのだろう。
かけがえのない出合い。人のつながりを生み、愛情を紡ぎ支える思い。すぎゆく時間を超えて受け継がれながら、ひとを生かしていく、運命の織物。


最終巻の結婚式で、サインする名字のないエマに、先生の名前を借りることを勧める。それを読む時に、その美しい運命の円環がつながれる瞬間に立ち会えた。


「新しい時代」、この「エマ」の中の時間のようには私たちの生活は瑞々しい感覚にあふれてはいない。悲しみを悲しむ事も難しく、喜びを喜ぶ事もそうだ。
だが、今も、私たちの国での今のこの生活も、いまだにこの「新しい時代」の中、この物語の続きの中にある。