北京オリンピック2

たまたまテレビを点けたらソフトボールの決勝戦をやっていた。日本対アメリカ。
日本は予選リーグでコールド負けを喫している相手。何式というんだろう、変則的なトーナメントの予選1位、2位チームの準決勝では延長9回に4点を取られて負けている。しかし、コールド負けから、延長に持ち込むまでになっているという上り調子の予感もしていた。

すぐに「先制点・・・」なんて声が聞こえてきたが、ご飯を食べながら考え事をしていて見逃す。2点目のホームランも見逃した。
逆に1点返されたブストスという4番の選手のホームランはしっかり見た。日本の投手上野は前日に続いてこの選手から被本塁打。この人すごい。次に登場したときには敬遠、しかし、「ルールに認められているのだから」と、成り代わって言い訳したくなるような感じ。別に詳しくはないのだが、打たれない気がしなかった。その後大ピンチを迎えた。それを乗り切ったのがこの試合のヤマだったか。
7回の追加点はさすがに見た。

とにかく上野由岐子という投手、めざましい。前日の2試合連投で8回以降タイブレークとはいえ計21回(!)、投球数300超をかぞえ、その翌日の決勝でも・・・という2日間3試合完投、400球以上。「本調子ではない」などとアナウンサーが言っていたがそんなの当然じゃん。しかし、本調子でないというのも球速が少し落ちたくらいのもので、コントロールもほとんど乱れなかったと言ってよく、アメリカの昨日のアポット、今日はエースのオスターマン、アポットの継投に、結局は2試合通してひとりで勝ったようなものであり、そのアポットには日本チームは昨日完敗に近かったのであり、日本ソフトボール協会のホームページには準決勝、敗者復活戦までのところ「世界一の投手」と書かれているが、それを実証した形だ。
変な話だが、日本チームは前日の試合ではタイブレークでようやく攻略できたアボットに決勝戦では6回に一矢報いたのだが(「日本らしい」点の取り方だったな)、そのタイブレーク以来「世界一の投手」上野もブストスには完敗。最後から4打席はホームラン2本にヒット1本、最後は敬遠・・・。最後の回の攻撃についてアナウンサーは2度は「ブストスまでまわさないようにしたい」と言ったのだ。しかし、攻守、ファインプレーもあって最終回は1ヒットを許すも3人打って取り、絶妙の勝負勘、バランス感覚・・・。

野球、ソフトボールというスポーツでの「チームプレイ」というもののあり方をも見せてもらった気がする。
野球、ソフトボールというものは、打撃戦でなければ投手(+捕手)と打者の個人対決に近い。その個人対決の緊張感が、打者の一撃から一転、球場全体が動き出す。最後から2番目の打席の痛烈なサードライナー、解説の宇津木元監督も一瞬ヒットが出てしまったとしか思わなかったような声を上げたものの、アウト。着実に勝利へ一歩一歩進めていった試合運びの中でも最後からふたつめの印象的な一歩だった。本家男子の野球以上に「日本野球」の神髄を感じさせられたような気がするなあ。
対称的にアメリカチームは、男子の野球のチームが主なメジャーリーガーの全く出ていないこともあってか、野球チーム以上にアメリカらしい華やかなチームだった。圧倒的な強さで勝ち進んできて、昨日の日本戦で初めて苦戦したものの、決勝でこれほど苦戦するとまでは思っていなかったはずの動揺によるミスが随所に見られたのにもかかわらず「2点差しかつかなかった」ような試合だった。豪快なようで巧いブストス。ワトリーのサードライナーは、ふつうなら当然のようにファールラインを抜けてヒットになるような当たりだった。最終打者ロウをゴロで打ち取り、試合は終わったが、この選手が6回裏の先頭打者で「世界一の投手」上野攻略に見事に成功、この試合日本チーム最大のピンチを作っていたのだ。
未来の可能性が、一瞬一瞬移り変わっていく、その一瞬一瞬に必然性のある濃密な時間。

ああ、面白かった。

でも、野球と同じくソフトボールも、これでオリンピックから消えるんだなあ。
しかし、それにふさわしい、有終の美をかざった試合だったと思った。