[美術クリムト、シーレ ウイーン世紀末展

どうしたらいいのだろう。
いちおうの美術関係者だと、私が?


札幌芸術の森美術館で上記タイトルの美術展を見た。
正直に書いていいのだろうか。それとも批判をする必要などないのだろうか。そんなことを書いて私は私の魂を腐らせるだけ?
あるいは私はスノッブであるに過ぎないような気もする。美術作品などは見る人それぞれなのだから、それをことさらに展覧会評などすべきではないのだろうか。評・・・なんてする知性は私にないが、感想・・・。
「この美術館はまともな絵画の展覧会はできないのか」などという言葉がうかぶが、そんな言葉の浮かぶ自分の品性下劣さを否定も出来ないが、どうしてもそんな言葉が浮かんでくることを、押しとどめられない。
税金の無駄遣い、内容にくらべて高すぎる料金・・・と、思ったのだけれど、仮にも美術関係者なのに(?)、お身方の足を引っ張るのようなことをしていいのだろうか。
いちおうこの美術館の弁護をしておくと、彫刻関係の時は、面白いことが多いけれど・・・いやでも、最近どんどんつまらなくなっているのかなあ。予算が削られているのかなあ。でも、それも使いようだろうし、これはあまりにも・・・。
お客さんはほとんど美術関係者でないのだろうけれど、地元作家の方の展示時の方が、活き活きとした表情で作品を見ていたような・・・そっちのときは関係者に近い人が多かったのかなあ。
大切な夏休みをこんな展覧会でつぶしてしまうなんて・・・。


これは、私の感想に過ぎないが・・・あまりのつまらなさにびっくりした。
「ウイーン世紀末展」と、「クリムト、シーレ」は、順番が逆でしょう?・・・クリムトとシーレ、各々まともな油彩作品は数点、しかもそれもさほど優れたものではない。シーレの細長い枯れたひまわりの絵は、ちょっと良かったけれど・・・。
ていうか、クリムトって、あまり絵が上手くないのかしら。ある種の写実力はあるけれど、印刷で見た方がまだましな感じ。空間表現として、皮層的で連続性に欠ける、なんて言葉でいいのかなあ。あえてそういった表現をしたかったのか、でも、そうなら日本の浮世絵などの方が数段上だなあ。というか、比較するのも申し訳ないくらい。・・・たぶん、過渡的な初期の作品しかこなかったんだろうけれど・・・。
シーレの方がましだけれど(少なくとも今回来ていたものでは)、特徴的な人体表現というもの、さほど優れたものとは思えない。来ていたどなたかの肖像画、色がかなりつまらない。やはり代表的な作品は来なかったのだろうけれど・・・。


モディリアーニと妻ジャンヌの物語展」・・・という展覧会のときもひどかったけれど、クリムト、シーレはほんの一部。半分は素描など。しかも、そんなにいいほうの素描じゃないような気がする。ほとんどは「ウイーン世紀末」とやら。
そのなかには、オスカー・ココシュカと、マックス・オッペンハイマーという聞いたことのある名前があって、ココシュカはまあまあだったけれど、絵本? 版画? いずれにしても、特筆するほどは良くない。マックス・オッペンハイマーという人の作品は、なんというか、見ない方がいいという感じ。あと、オットー・ワーグナーというケンチクカの人か何かの絵があったけれど・・・少なくとも絵はコメントするほどのものではない。
その他は・・・古くさい装飾画がまだましな方というか・・・。
これで判断してはいけないのだろうけれど、これを見た限りではウイーンの世紀末には、美術的な価値はないのではないか、パリとはくらべようもない。今の札幌でもまだましじゃないか。
または、どうでもいいものをロハで借りてきたんじゃないかとすら思える・・・どこから持ってきたのか。まさか国内の美術館であんなものを収蔵しているんじゃないだろうな。でもウイーンからあんなものをわざわざ持ってきた? ありえない・・・世界では子どもたちが飢えているというのに・・・なんか、そういう次元の話のような気がする。
いや、いいんだ。いろいろな作品が描かれるということは。でも、それを何でも世界の果てからわざわざ持ってくることはないし、北海道の美術関係で最も重要なパブリックスペースのひとつをひと夏もそれで占拠する必要もない。宣伝することもない。見に来た人の貴重な時間が無駄に・・・。


マイナスの意味では勉強になった。ダメな画家というのは、塗りつぶすために塗りつぶすのだ。画面の中を。
展示にはそんな絵が多かったなあ。つまりは、セザンヌの逆・・・「ここをわざわざ塗らなきゃまだ良かったのに・・・」平面の表現ですらない、何か塗り絵の部分。
自分の絵を思い出すと人のことは言えないのだけれど。しかし、北海道の画家でもほとんどのひとはそんなことはしないと思うんだけれどなあ。私たちは誰でもセザンヌを見ていて、この時代のウイーンの人たちはまだ見ていなかったからか・・・。


人の仕事を悪く書くと、自分がいやになるなあ。私はただの40過ぎたプーなのに・・・。


アーノルト・シェーンベルクの絵があって、思いのほか良かった。一服の清涼剤のような気がした。一枚はキャンバスだったが他の二枚は厚紙とかボール紙とか書いてあったな。油彩が3枚。
彼の美術との関わりではしんどい人間関係があったことが解説ボードに書いてあって、彼に絵を手ほどきした人の絵も横に置いてあったが、ヘタ? シェーンベルクのほうがずっとまし。しかし彼の生涯のことを考えると、私は鬼かということになるからしんどい人間関係のことは書かない。


そういうようなウイーンの絢爛たるサロンのようなものの人間関係、肖像として描かれた人物の経歴が解説ボードにあったりしたが、「絵を見た限りでは」無駄な感じ。
シーレを描いた肖像画二つは二枚ともかなりヘタ。これは衝撃的。
世紀末ウイーン取るに足らず。
単にいいものを持ってきてないだけなのかなあ。


どうしたらいいんだろう・・・。