民主党についていくつか

昨日参議院予算委員会の質疑をちょっと見ていたら、菅直人副首相、財務大臣が(しかしいきなりずいぶんな重責がこの人に舞い込んできたものだ)、若い頃にオルダス・ハクスリーの「すばらしい世界」を読んだことを話し、その小説の中の管理が行き過ぎた社会のことが印象に残っていて「最小不幸の社会」を目指すというようなことを考えた、というような話をしていた。政権党の民主党議員による質問に応えて話したものではあるが、政治家がそういう話をするのはちょっとうれしい。
私自身の政治への理解が深いとは思っていないが、ここ数年それなりには関心を持とうとしてきた。その中で、菅直人という人は妙に気にかかっていた。今は、実はこの人が一番信用できるんじゃないかという気がしてきている。ひょんなことで政府の重心として存在感を示すことになったが、不安と期待を感じている。


その前に話したのは鳩山首相で、「幸福追求社会」という言葉で、人々が歯車のように働いて利益ばかりを追求するのではなく、一人ひとりが幸せを追い求めることができる社会にしたいというような事を語っていた。エンデの「モモ」、ずっと以前に買ったのだけれど、読んだことのない本の中で書かれているはずの事を思い出した。「モモ」について鳩山氏が話したわけではない。
政治・経済のリアリズムからすると、唐突な気もする。いや市民の実感でも、幸福どころか生活そのものが脅かされつづけている状態で、甘い言葉を聞かされても違和感を感じるだけかもしれない。鳩山氏のもっと有名な言葉、「友愛」というものもまた甘く、一瞬耳を疑うような言葉だ。おじいさんの標語(?)だったとはいえ・・・。
ひとりひとりが幸福を追求できる社会、というのは私も若い頃にはあたりまえのように目指すべき社会として思い描いたものでもあった。そうあらねばならないとすら考えていたはずなのだが、いつの間にか忘れていた。当時からそんな甘い標語は嫌っていたものの、続いて話された中身には異存はない。


思えば、バブル経済とその崩壊、というばかげた色々な意味での財産の空費を経て、その後はそのつけを国民全体に払わせることを正当化し、格差拡大を推進し、一部の利益のために全体的には損失しか生まない制度設計が、小泉フィーバーなるものの陰に隠れて起こっていた、政治の空白とも思えたし、マイナスの政治とも感じられた。
・・・と、私は忸怩たる思いで振り返っているものの、しかし、これもあとからそう解釈しているものであり、別の選択をしていたら別のもっと大きな問題が起きていたかもしれないとか、その可能性も否定できるものではないが、いずれにしろやり直すことはできず、私の考えは鳩山首相菅直人氏に代表される立場のほうに近い。
とはいえ、現在の産業、商業の世界、あるいは市民感覚としてさえも、支配的になってしまっている、自己責任論のようなもの、共感を伴ってばかりではないにしてもいつの間にか市民の中に共有され、各々に内在化してしまっているが故に、それを元にして色々なことに対応せざるを得なくなっている感覚に、理想は押しつぶされ、力を失い、鳩山氏が語るようなビジョンには、現実から遊離している、と感じてしまわざるを得なくなっている。私も。


ただ、それも情けない話だ。と、ふと思った。
鳩山氏の妙な鈍感さと、菅氏の現実感覚との両方が同時に示されるときに、妙なリアリティーを感じ、この国も捨てたものではないかもしれない、なんて言葉も、ちょっと浮かんでしまった。
オバマはある意味評価するものの、アメリカという国の限界も逆に浮かび上がったかもしれない。日本の政治のイノベーションは、アメリカの政権交代以上にスムーズには行かないかもしれないが、いちおうは国民のひとりである私も、嘆いていてばかりではいけないだろう。長妻さんが苦労していようとも。


もう一人、小沢一郎という不思議な政治家のことも忘れるわけにはいかない。
今では田中角栄の流れを最も濃く受け継いでいるのかもしれず、従って田中や竹下と同様検察の追求の対象になったのか、と、うがった見方をついしてしまう。鈴木宗男氏が戦うと言っていたのには、マスコミや世論(?)と違って私は共感を覚えてしまった。かつてムネオハウスにあきれたことがあったが、あれも情報操作に乗ってしまったのか。と、思い出す人は少ないのか、人々は自分が間違っていたとは思わないものなのか、いや、あれがあったから宗男氏の人気が高まっているのか。とにかく小沢氏の疑惑はどちらかというとどうでもよく、あんなことで政治に停滞してもらいたくはないものの・・・。
というようなことはさておき、いや、関係があるが、この人がもし金集めに奔走していたとしても、それはよりよい政治のためじゃないか、と、甘いかもしれないが感じてしまう。世襲議員が政治資金というかたちである意味財産を非課税で相続するようなことよりは、ずっとましじゃないか、と、言い始めたら制度がぐずぐずになるのか・・・。小沢氏が多くの若手の政治家志望者の面倒を見ていた、そして多額の資金をそのためにかなり使っていた、ということ、とりあえず全くウソではないだろう、鳩山氏が自民党議員に小沢氏の資金問題、土地購入について感想を求められ、そのことに言及したのは、踏み絵を踏まないということになったようだけれど、菅氏も岡田氏も踏まなかったのに前原氏は敢えて踏んで見せたようだが、それもさておき、総じて、現民主党には何か感情移入してしまうところがある。
とにかく、小沢氏というのは、何か性格的に損をしているようだけれど、しかし彼が自らすべきことをするためには、情に流れるわけにはいかなかったのかもしれない。しかし、彼の政策というものは、今のところよくわからない。民主党の様子からは案外融通が利くのかもしれないとは思っているが・・・逆だという印象のほうが強いのかな。


なんにしても、与党としての開き直りが始まるまでは、民主党の方がいいだろう。
自民党のイメージ戦略のくだらなさに救われていなければ、もっと支持率が下がったような、現状ではそんな成果しか上げていないものの。事業仕分けのあざとさは今ひとつ好きにはなれないものの。
普天間基地移転に関しても、現段階ではいいと思っている。ある程度の失敗があったとしても、と言うと、地元の、あるいは移転先の当事者の方々には不穏当と感じられるとしても・・・。


そういえば鳩山氏が先日買い込んだという本のリストの中に、安彦良和氏の「虹色のトロツキー」を見つけたときにもちょっとうれしかった。彼は文庫本で買ったらしいのだが、私はここ数年間単行本を見つける度に買い込んでいるものの、まだ全巻そろっていないものだった。
鳩山さんが安彦さんの問題作(というほとでもないのかな)を読むこと、今そんなものをチェックすること、そんなことをする首相だということ・・・。思い出したくはないものの、麻生氏がマンガ好きだというような話があったことと間逆にまともな話だと思った・・・しかし2007年当時の麻生氏の愛読マンガリストをネットで見てみたら、思ったより私と共通していた・・・ただ、「トロツキー」はね・・・2ちゃんではサヨクが読む本だとか書かれていたらしい・・・「トロツキー」だからな・・・。そういえば、衆議院予算委員会自民党の小池氏が川端文科相赤松農水相に、若い頃の学生運動の話をさせていた・・・あれはいったい・・・。
とにかく、私が欠番をそろえられる確率は下がったのか・・・文庫版を買うしかないのか・・・。