音楽と構造 7

音楽のお勉強的読書が続いてます。
図書館から借りてきて、もうすぐ読み終わるのが「音楽学を学ぶ人のために」という本で、音楽学という学問があるということも、知らなかった。美術だと美学ということになるのだけれど、これはたとえば大学だと文学部の一分野であって、美術を扱っていることも多いのだけれど、微妙に違う。美は人間の営みに見られるとは限らない。音楽は、人間の営みに限るのだ。ていうことは、美術を扱う、「音楽学」に対応する学問があるとすると「美術学」ということになるのだろうけれど、そんなものはないのだろうなあ。それは、「美学」ってものがあったということもあるのだろうなあ。
てなことは、戯言のたぐいだろうが、さりとてなおざりにはできないのだ。なぜならたとえば本を読むときに選ぶものがどこにあるやら、何をキーワードにしていいのやら。


などというと、音楽学なんていうものが何か中途半端なわけのわからないもので、どうおつきあいしていいのかわからない感じ、あるいはなんか狭い領域といえるような感じもしますが、どちらもそれなりにはあたっていて、全く違うようでもある。
たとえば民族音楽の研究は、音楽学の一分野だったり文化人類学のフィールドワークだったり、あとは作曲家などの音楽の実践家の仕事だったり、それらそれぞれ同じ対象を扱っていてもアプローチが違ったりするだろうし、またすべて音楽学と関係があるというのはあたりまえのようで、結局は音楽学って何だ、ということになりそうな、そんな感じ。
音響学なんていうのは自然科学で生理学なのだろうけれど、しかし西洋音楽のもとをたどるとギリシャに行き着く論理的なすじみちがあって、その行き着いた元は自然科学の一分野だったりするし、そのことに一理あったり、というのが近代のヘルムホルツと関係があったり、平均率だって妙に科学的というか、数学的というか、音楽ってなんなのさ、と言いたくなっても不思議じゃあないですし、それはギリシャルーツの文化の話であって・・・そりゃあ古代ギリシャの影響ってローマでさらにふくらんだりアラブと交わったり、世界のほとんどの地域で無視できないのかもしれないけれど、ところがそう簡単ではなくて、日本だってかなり違う、というか、日本は全く違うはず・・・。
西欧って、西欧文化って何だろうか、てな話になりそうで、日本からすると大航海時代以前はシルクロードが行き着いたそこからさらに先、ということだったのだろうし、中国というフィルターを通した、あるいはそれ以前にインドやチベットなんかを通った影響・・・かすかだろろうな・・・しかなかったのだろう・・・。
しかし、いずれにしても現代になってしまったら、西欧由来の、ペンタトニックだろうがなんだろうが平均率という響きに変形された音楽以外ほとんど聴いたことはなく、しかし、そこに現代、20世紀の北アメリカやラテンアメリカの、アフリカやインディオ、スペイン、ジプシーやらなにやらと西欧の音楽が混じって出来た様々な影響も混じっているというそんなものたちを音楽だと思っている日本の今のひとたち・・・ほぼそういうものばかりを聴いて育ったのだから。
で、「音楽学」をやるのは、面白いような、なにか得体が知れないような・・・でも、本は、今の私には留保付きではあるけれどとても面白かった・・・。


てなことと関係があるようなないような、急に話が変わるようなことなのだけれど、本棚の整理もしていて、「ハンガリーの音楽教育と日本」なんて本をしばらく見ていなかった棚から見つけて少しはめくってみると面白そうで、そこには当然のようにコダーイとかバルトークなんて名前が踊っているのだけれど、ちょっと読んだだけでバルトークの至言が載っていて、それは民族音楽について述べられたこんなものだ。
「形式の観点で可能な限り最も完璧なものであり、また、最も変化に富んでいるものです。その表現力は驚くばかりに大きく、すべての感傷性から、そしてすべての不必要な誇張性から完全に解放されています。」
これはつまり西洋クラシック音楽のロマンチシズムの、アンチテーゼのような気がするのであって、生活を愛しているひとの言葉なんじゃないかと思うのでした、私は。そして、音楽に関してここまで正しい言葉を読んだのは、久しぶりだという感じも・・・音楽の専門家以外では不必要としか思えない音楽に関する多すぎる感じの読書量・・・現在平行して5冊読んでいて・・・他にも精神医学系の読書がごっつそうなのがもう1冊・・・美術系が3冊・・・文学系が1冊・・・何をやっているのか・・・まあ、そんな、どれも面白い中からさらに輝く言葉、さすがバルトーク
音楽の話なのだけれど、くだらない感傷と無駄な誇張、って、役に立たない文化の見事な要約・・・私もその批判から逃れられない。文化といっても生活と無縁ではなく、生活から浮いた空虚な文化の貧しさ、文化と生活が別れてしまうことの危険性をも見通していたのかもしれない。


などと思いながらYouTubeで探して聴いているのは、コダーイの曲。いいなあ、ほっとする。今流れているのは、合唱曲のプレイリストから・・・。ああ、学生の演奏だ。見事な教育の成果。日本での教育にあるお仕着せのイメージと違う。簡単に比べられるものでもないだろうけれど。


あと、関係がちょっとあるので今読んでいる他の音楽の本を書いておくと、やっと、なぜかブックオフで見つけた「東京大学アルバート・アイラー―東大ジャズ講義録・歴史編」と、高橋悠治の新しい本と、ブーレーズパウル・クレーと音楽の本。

音楽学を学ぶ人のために

音楽学を学ぶ人のために