音楽の楽しみについて 2

朝、通勤中の車の中、NHKのFM、笑福亭笑瓶師匠の出ているクラシック番組で、「宮古島市ジュニア・オーケストラ」が演奏するグリーグ作曲「ホルベルク組曲」の序曲を聴いた。
何か不思議なわくわくする気持ちが沸いてきた。こんなことはそんなにない。
グリーグのこの曲は知らなかった。演奏した、子供たち、ということになるだろう(調べてみたら高校生もいるようだが、小学生もいるらしい。中学生も)、彼らは、どうだったのか、わからない。音楽的な素養では多分私が一生かかっても決して追いつくことのない才能をすでに身につけているとは思うが、しかし音楽に関する教養というか、雑多な知識、あるいは経験の深さは別として積み重ねてきた時間の長さや、ややこしさではさすがに私のほうが・・・と比較する意味が、読者には感じられないだろうが、つまりは子供たちがこの音に、どのような新鮮な思いを注ぎ込むことになったのか、という想像がひろがったということだ。
テンポは、安定していると言えないのか、わからないが、プロの安定している演奏にはない新鮮な響き。縦の線も若干のズレがあるかもしれないが、なんとなく、プロよりいい。いいとか悪いとか、ではなく、心が動かされるということ、か。
曲も、何か妙に新鮮に感じた。あるいはいい選曲なんじゃないかと、思う。だとしたらなぜこの選曲はいいんだろう。
弦楽合奏の曲、もとはピアノ曲、作曲者自身による編曲。序曲はピアノ版が分散和音になっている部分がリズミカルな合奏になっている。その、合奏しているという事実がより事実として迫ってくる感じがする、そのことは、一般的にいいことだととらえられるとは限らないのだろうが、私は、それがけっこう好きなようだ。
グリーグという作曲家の印象も、良くなった。最初、モーツァルトかな、と当初は見当違いな印象を持っていたけれど・・・グリーグだったとは。何か私の知らない清らかな世界があったとか・・・ピアノ版よりも弦楽版のリズムが何か舞踏的か、とも思った。ちなみに、ピアノの音源はIMSLPという楽譜の無料配布サイトに、これまたフリー音源として公開されていた。


最近、もっとプロの話では、先日終わりの部分ちょっとだけ聴いた・・・ブラームス交響曲第1番の、終楽章の、一番最後の部分がちょっと新鮮だった。私が知っているのは、ラジオから録音して良く聴いたのはベームのものと、岩城宏之のもの。岩城のものも、少しさっぱりした演奏だったはずだと思うが、今回のものは、多分さらにテンポが一定で、それがいいかどうかもわからない・・・何しろ1分もなかった・・・が、久しぶりに面白かった。ブラームスは、いいなあ、1番も、と思った。やっぱりラジオで・・・国内のオケに外国人の指揮者だったような・・・。


未来のことだが、10月には武満徹さんの80歳バースデイコンサートみたいなものが、たぶん東京で開かれる。指揮者の人は、作曲家の人? ピアノはピーター・ゼルキンで、なんと、「アステリズム」をやる。それだけでも、なんとか生演奏を聴いてみたいと思う。そんなものは最近ほとんどないのだけれど・・・それどころか情報をチェックしたりしていないのだけれど・・・いずれにしても、さすがに無理だなあ。


久しぶりに、アンサンブルの練習に出た。いつも、私が曲を出すと嫌な顔をするひとは、今回いなかった。と、書くと、非常に良くない人間関係のようだが、それはどうかわからない。私はひどい人間なので、そういう態度を取られるのはあたりまえだというのもわかる。私は誰かが自分の好きになれない曲を出すと、露骨に嫌な顔をするので、そのことに嫌悪感を持つのもわかる。私のようなひどい人間がいるのに、そんなに人間関係は悪くない気もするのだから、実際はとても人間関係がいいという書き方を考えた。そんな見方は、ないか。
嫌な顔をするというか、それだけではなく、「はい、次」とか、「こんな曲をやることに意味がないと思う」と、あまりに早いタイミングで言われてしまったのだ。私もそんなことを言ったかなあ。曲が良くならなかったのは、いつもやっている曲とタイプが違うことが理解できなかったからであり、だからこそ、私はやりたかったのだが、そんなふうに言い返せる人間ではない。その、言い返せないことのほうが・・・何しろ何を言っていいかわからないのだ、楽器などやめてしまおうかという気持ちにさせる。
が、とにかく先日は、そういうひとがいなかったので、いつもよりおずおずと、ではなく曲を出した。
いや、こんな事を書いて悪かった。いままでは鬱傾向だったから、自分が、あるいは少なくとも私が曲を出すことが厭わしく思われている、と思いこんでいたのかもしれない。今は鬱傾向が薄れたから曲を出せたのかもしれない。
あとで、この際もっと他に出したほうが良かった曲があったことに気付いたが、後の祭り。


それにしても、何が音楽の楽しみなのか。

武満徹:ノヴェンバー・ステップス

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