桐生悠々
という人がいたらしい。
NHKのドキュメンタリーで知った。
「都市空襲を受けるならば日本の敗北は必至である」という内容を含む、『関東防空大演習を嗤(わら)う』と題した社説を信濃毎日新聞の主筆として書き、陸軍の怒りを買い、長野県の在郷軍人会が信濃毎日の不買運動を展開して退社を余儀なくされた、などということで知られているという。テレビでも言っていたが、今Wikipediaで再確認。
なんとなく親近感を持った。
私自身には言論の機会も能力もないのだが、またそれらがあったとしても先見の明があったかどうかわからないが、あるいはその意見が先見の明に類することであるかどうか、しかしとりあえず世論、世の風潮には流されずに、あるいは反抗的な論陣の派閥にもなじまなかったようであり、面白い。
言論の機会が彼にあったとはいえ、すこしの理解者の他には孤立無援であったようで、社内においても冷ややかに遇され、退社に同情するものもなかったというのは、マルクス主義を批判する立場をとっていて社内の左翼的な勢力とも対立していたこととも関係していたかも知れない。
というのはテレビとWikipediaとを混ぜて記述。
「防空演習を嗤う」というのも単なる正論でしかないが、しかし不穏で反感を買う物言いだ。
あるいはこの人の理性が反感を買うことで、むしろ日本人の付和雷同を加速さしめたかもしれないという、振り返ると嘆かわしいが、常に、おそらく程度の差こそあれありがちなことが現在進行形で嘆かわしくもある。
そんなある種の不遇にも、親近感がある。
彼の遺言にも近い個人誌の廃刊の辞がWikipediaにもある。
率直な言葉が響く。そんな響きは、最近聞くことはなさそうだ。
そういう嘆かわしさ、そしてしかしそんな人にも言論を残すことが出来た戦前と、今は違うように思えるのが、私の不明にすぎないのであればいいが、そうだとしても、明快なことばはどこにも響いていない、響くことが何故か難しいのではないかと思う。
なぜか。
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