プッチーニとビゼー

誰も寝てはならぬ」、プッチーニの、「トゥーランドット」の中のあの曲。
その中でも有名な、盛り上がるところのメロディー「以外」、が、思いのほか美しい。
と、思ったが、それは昨日聴いたオーボエとハープの編曲を聴いて思ったこと。
最初はこの曲だと気付かず、なんの曲だったかな、ビゼーの「カルメン」の中の曲か、と、思っていたら、盛り上がる部分になって「誰も寝てはならぬ」だとわかった。
間違えた曲にあたるのは何か、「ミカエラのアリア」かと思ってYouTubeで調べてみたら違った。「花の歌」のイントロが印象的だと思ったがこれは「カルメン」の他の曲で展開するのだったか。


カルメン」初演は1875年。不評だったという。間もなくビゼーは亡くなり、「カルメン」の人気が出てきたのはエルネスト・ギローによる改作版の上演によって、らしい。その後は多くの人が知るとおり。
1972年のゼフィレッリが演出したクライバー指揮による全曲版がYouTubeにあって、2時間34分もある。こんな長い時間の投稿ができるのか・・・観客の熱狂がすごい。映像も美しい。
有名な曲はたくさんあるはずだが、しかし、適当につまんで聴いてみようとすると知らない曲ばかり出てくる。
カルメン前奏曲」として知られるのは第1幕への前奏曲だろうか。最初を聴いてみると、有名な陽気なような次に、やはり有名だけれど違う曲だと思っていた重いメロディーが続いて、再び今度は知らない陽気な曲になって幕が開く。それは群衆の歌になっていて、この舞台に人々がうごめく様子の映像が夢のように素晴らしい。
オペラとはいったいなんなのか、とにかくこの映像のスペクタクル、いや、この場にいた観客にとってはフィルムではないのだから映像ではないか、見事さには圧倒される。YouTubeで見てさえ。とはいえ、そうであっても、この2時間以上という長さは、間に2度の休憩を挟んでいてさえ、人によっては休憩があるからこそたいそうなもので、3時間も


トゥーランドット」はプッチーニ存命中は完成されず、フランコ・アルファーノという作曲家が補作し、その補作部分をトスカニーニが大幅に削除した版で初演・・・正確には初演1夜目には補作部分は全く演奏されず打ち切られ、アルファーノの補作部分は第2夜にはじめて演奏された、というようなことがあったらしい。
私は「誰も寝てはならぬ」しか知らない。
トゥーランドット」の初演はプッチーニ1924年に亡くなった後、補作が完成した1926年のこと。「誰も寝てはならぬ」には9、13の和音が使われているらしく、ドビュッシーの「ペレアスとメリザンド」の新しい和声の影響があるという。
カルメン」からほぼ50年。オペラの時代はプッチーニの死で画期を迎えたのだろう。しかし、それからまだ100年も経っていない。
1926年とはどのような年だったのか。1918年に第1次「世界」大戦が「終結」した7年後、1939年に第2次「世界」大戦が「勃発」する13年前、という表現が適当かどうか。


たしか「ミカエラのアリア」だったか、ビゼーの曲の中ではその曲が好きだという方がいた。私がビゼーに熱中していた頃、そんな話をした。その方はもうこの世にはいない。
人は亡くなるものだが、そんなことを思い出すと、死とは何か大変に不思議なことのような気がする。人の存在が不滅だと考えるほうが自然にすら思える。