「機動戦士ZガンダムII -恋人たち-」

機動戦士ZガンダムII -恋人たち- [DVD]

機動戦士ZガンダムII -恋人たち- [DVD]

弟がDVDを借りてきて、見てしまった。
数年前に弟と「エルガイム」「Zガンダム」「ZZガンダム」あたりを見倒した。「ガンダム」も、映画版で見たかも知れない。「エルガイム」から始まるのは、弟の記憶がそのへんから始まるからだ。我が家のビデオがそのころやっと整ってきて、私が録画したテープを残したまま大学へ行くために家を出ていった当時弟は8歳。13歳の妹と一緒に見ていたのだろうか。
Zガンダム」も「ZZガンダム」も、放映時に見た感触では「エルガイム」ほども面白くはなかったのだが、30代後半にもなって見直した時には特に「Zガンダム」がずいぶん面白かった。勢いで「逆襲のシャア」「Vガンダム」「∀ガンダム」と、OVAの幾つかを見た。富野作品ではないTVシリーズは最近作の「ガンダムSEED」が一番ましなようだったが、どれも数話見ただけでやめた。OVAは富野作品でなくても結構面白かったような気がしたのだが、TVのものは辛かった。「Gガンダム」は、一話も見ていない。「ブレンパワード」「オーバーマンキングゲイナー」あたり、特に後者には興味があったが、弟がさほど見たがらなかった。これらも数話見たきり。他にすることもあるしな。いつか見ることはあるだろうか。




劇場版は去年放映されたのだったか。


遅ればせながら見た。映像が昔のものからブラッシュアップされているかと思うと、そうでもなかった。書き直された、または新しく付け加えられたカットとTV放映時のカットとの絵柄の違いは慣れるまでなかなか辛かった。新しいカットはパラパラ漫画的な荒さはないものの、古い映像に比べ表現力で優れているとも思えなかったのは残念だ。キャラクターデザインをやり直したとさえ思える丸っこい顔、古いカットに比べると無表情な感じに思える。また、美男美女が同じ顔に近づいてしまって個性に乏しくなった感じがする。描線が細くなったのは工程がデジタル化したために可能になったことだろうか。むかしはひとの手で彩色しやすいように描線が太かったのか。その細い描線もまた表情に欠けるように思えた。
はっとするカットは、昔のカットで丁寧に描かれていたものなどの方が多かった。
このTV版「Zガンダム」のアニメーションがどのような人に作られていたかというと、最初の「ガンダム」のスタッフ、安彦良和氏の流れというよりは、「イデオン」「ザブングル」「ダンバイン」という、「ガンダム」以後の富野作品をキャラクターデザインから、作画まで支えた湖川友謙氏とスタジオビーボォと富野氏で作り上げてきた流れにある。「エルガイム」ではキャラデザインは違ったものの、作画スタッフは「Zガンダム」までかなり共通しており、安彦良和氏のデザインしたキャラクターを湖川友謙氏の動き、構図、演技の付け方で動かしていたとも言えるものだった。
それが、放映当時は微妙に違和感を持ったものだけれど、表情に乏しい「エルガイム」のキャラクターよりは豊かな表現をもたらしてもいたかもしれない。湖川友謙氏のキャラクターもユニークなのだけれど残念ながらちょっとパターン化しているキライがあり、「Zガンダム」で、表情豊かな安彦氏のキャラクターを、誇張がありすぎるきらいがあったにしても遠近感に富みメリハリの利いた湖川風アニメーション表現で映像化されていたことは、それなりの画期的なものであったと、今にしてだけれど思える。
というのも新しいカットに若干失望したためでもあるが、しかしもしかしたら、アニメーターにとって絵柄の手癖のようなものは深刻なものなのかも知れず、今回のスタッフも実は良くやっていたのかもしれないが、映像表現としてつまらないものではなかったにしても、残念ながらアニメーション作品としての個性を減ずるような要素が否めなかったと思う。


しかし「Zガンダム」とは思えないほどわかりやすい、気持ちを投影しやすい作品になっており、これは富野氏の作劇技術向上のせいか、などととんでもなく偉そうな事を思ってしまったが、普通に面白かった。
これを、もとになったTV版を知らない人が見たらどうなのかはわからないが、物語としてはTV版よりまとまっているだろう。同時多発テロ以降とも思えるセリフの書き換えがあったような気がして、ちょっと違和感があったが、これも、もとになったTV版を知らない人が見たらなんともないのかもしれないし・・・。
絵や、映像の細かい手触りが気になりさえしなければ、TV版のファンは見た方がいいと思う。ただ、映像には、もうちょっと期待してしまっていたので・・・。