アマチュア音楽家の演奏会 6

昨日もマンドリン合奏のコンサートを聴きに行ってきた(もう一昨日になったけれど)。
ふと思ったのだけれど、今年は聴きに行ったコンサートより出たコンサートの方が多い。聴いたのは昨日でたった3度目じゃないか。出たのは・・・アンサンブルも含め5回、来週にはもう一度、アンサンブルのコンサートに出て6回目の出演になる。下手なのに。出られそうなものは全部出たような・・・。
さらに次の週に合奏練習に行って、もしかしたらもう一回アンサンブルの練習があって、今年の楽器がらみの予定は終わるな。あとは好きにやる。音楽をソロでやる度胸はない(実力もないが)ので、ひとにあわせなきゃならない。そのあたりで音楽、楽器をやるのがわずらわしくなることがありますね。・・・と、書いてはみたけれど、わずらわしいというのとはちょっと違うか。でも、全部終わるとなると、ほっとする。すぐ来年の予定が入っているんだけれど。


昨日聴いた団体はポピュラーの編曲もの中心のプログラムが特徴的な団体。いわゆるマンドリン合奏のために書かれたオリジナル曲は、1曲だけになってしまっていた。といっても4楽章の組曲で、小曲ではないのだけれど。あと、クラシックの編曲ものが1曲、これはちょっとした難曲だったけれど、ふつうの団体でやりそうなのはここまで。あとは、ポピュラーの編曲。映画音楽はちょっとクラシックよりかな。他でやるところもあるかな。
私は学生時代、この団体を理想としていた。今回はなかったけれど、オリジナルの新しい曲もよく取り上げていた。以前は北海道在住の作曲家への委嘱活動をしていて、そのことだけですごいと思っていた。のみならず、そうして生まれた曲も面白かった。私たちの大学サークルでも、そのうちの何曲かやっている。
ポピュラー編曲も当時からやっていた。ドラムが入り、ミラーボールが回る(?)ステージがある。こころざしは尊敬していたが、ドラムセットの音は、ちょっとかんべんしてほしいと思っていた。でも、そういえばブラスバンドエレキベースやドラムが入っているのを見たことがあったような気がするな。最近はドラムの取り入れ方がうまくなってきたような気もする。時々すごい。何年か前にはモーニング娘。(と、「。」をつけようかどうか迷うのが腹立たしい・・・)の「LOVEマシーン」が入ったメドレーがあって、すごい迫力だった・・・。
今回は1曲だったけれど、ときにはクラシックの編曲でステージをひとつ構成することがあったかもしれない。気のせいかもしれない。いまやホームページがあって今まで定期演奏会で演奏した曲が調べられるのだからそれを見ればいいのだけれど、今日はやめておこう。


1部が映画音楽で、なかなか楽しい。
「ALWAYS三丁目の夕日」から。でも後の曲の印象が強くてこの曲のことは忘れてしまった・・・。
ニュー・シネマ・パラダイス」みんな知っているこの映画の曲、間延びしないようにやるのが難しそうだという印象。しかし、響きが美しいところがあった。とにかくいい曲だ・・・。
ピアノ・レッスン」はマイケル・ナイマンという作曲家が気になっていたが、いまひとつ乗り切れなかった覚えがある。今回聴いても、CDを買わなくて良かったとは思った。しかし、ピアノを加えた響きなど、今回の演奏は面白い。マンドリン・アンサンブルのプログラムとしては意欲的で成果があったと思う。ちょっと妙な曲なのですね。その、ちょっと、というのが私は嫌なのだけれど・・・現代音楽好きとしてはポスト・ミニマル・ミュージック、なんて感じかなと思っていたのだけれど、ただのミニマル・ミュージックの、フィリップ・グラスなんかのほうがいいなあ。そんな認識で現代音楽好きと言っていいのかどうかもわからないが。美術のほうのミニマリズムのほうが好きだなあ。ただし、ミニマリズムもイムプレッショニズムと同じで、本人たちが言い出したものではないのか・・・。と、マイケル・ナイマンの1曲でいやらしくも中途半端な教養で字数を費やしてしまったが・・・。
フランス音楽のメドレーは、原曲のイメージが損なわれず、なんというか、においたつような感じ(?)があったと思う。おわりちかくでちょっと聞こえてきたメロディーは何かなあ。
トリの「ショウ・ボート」からの「オールマン・リバー」という曲、ブルース、といっていいのだろうか。その深さ、さらに展開の妙もあって、ドラマチックな名曲だ。アメリカという国、その光と影、そんなことに、私たちだって関係がないわけではない、という書き方では何か違うな。そんな小理屈ではなく、心を打つもの、音楽の力を感じた。もちろん演奏に心がこもっていたからであって、心をこめるということは一朝一夕にはできない。などと、私ごときに言えたものでもないが。


2部、唯一のオリジナルはここで演奏される。ブーシェロンの「スペインの印象」、超有名曲。フランスの人だったとは知らなかった。自然な演奏。この団体は最近は他の団体に比べて演奏自体はパッとしないように言われているようだけれど、というようにははっきり言われないが、しかし、ギターを中心としたリズムののびやかさは他団体に欠けている部分ではないか、と、思った。とはいえ誰でも知っているこの曲だったからのびのびしていたという可能性もなきにしもあらず。あとは、セロがエネルギッシュに弾いていたのが印象的な部分があった。もしかしたらギターのリズムがいいと思ったのはセロとギターのコンビネーションがあるということで、ベースがそのじゃまをしていない、といった感じじゃないかと思った。これは、セロもベースもなかなか練習にそろわない団体ではできないことだろう。そろってもなんかグルーブが生まれないということもあるかもしれないが。
次がシャブリエの「スペイン」で、これが楽しい。鈴木静一氏の編曲! 彼にはラヴェルの「ボレロ」の編曲もあり、フランス音楽が好きだったんだなあ、静一っつぁん。いや、スペインか、という、ややこしい話だけれど、さらに気づいてみるとこの2曲ともフランスの作曲家によるスペイン・・・オケで聴くとふつうに楽しい曲も、マンドリンで聴くとスリリングで楽しい曲に! とはいえ危なっかしくてヒヤヒヤしてしまうようなわけではありません。とはいえ、やっぱり普通の団体ではやらないな、この曲。原曲はオーケストラでピアノも入った色彩感の豊かな曲、鈴木御大の編曲も管楽器の入ったもの、仕上げるのはさぞかし大変だったろう、リズムも複雑で指揮をできるのがすごい・・・指揮で壊してしまいそうな曲・・・そんなことはなかった。でも、逆に驚いたのは、観客にはこの曲も難しいのかなあ、という反応だったこと。この演奏ならもっと反応が良いはずなのだけれど。
満員に近い観客席、なんかくたびれたようなおじさんおばさんも多い。ほかの団体のこぎれいな感じの観客席とは違う。失礼だと思われたら申し訳ないですが、この観客は誇るべきものかもしれない。


3部、大塚愛の「さくらんぼ」から始まるが、いにしえのナックの「マイ・シャローナ」をほうふつとさせられるリフが強烈な編曲。打楽器が入っていないのに・・・。あとは、8ビートの曲に4つ打ちのベースを入れたら違う曲になっちゃうじゃないか、という感じはしましたが、なにか不思議な体験。
次の「すべての山に登れ」、内省的なメロディー、なんていう言葉を使っていいものかどうかわからないが、暗いようで、心の底に力がわいてくるような、この音楽の力というのは、なんだろう。「オールマン・リバー」といい・・・。シャブリエとこの2曲だけでも聴きに来たかいがあったかもしれない。ほかも面白かったが。
次の「マイ・レボリューション」、これも不思議な印象。4つ打ちのベースはこっちだったかな。小室哲哉がその後あんなになっちゃう(おちぶれる方でも、犯罪の方でもない、売れまくる方)とは思わなかった頃のナイーブな印象が強い曲。マイケル・ナイマン同様小室哲哉はあまり好きな音楽家ではないが、しかし、マンドリンに置き換えて聞こえてくる音楽の骨格のようなものは面白い。
「青春ドラマメドレー」、学校のチャイムの音で始まり、終わる。ここでは聞き慣れた曲がそれほど不自然ではなく聞こえるのは、ドラムや管が入っていたためだろうか?  演奏するメンバーがこちらのメロディーにはよく親しんでいたからか。メドレーの、曲の変わり目でならされる和音はやっぱり気になるけれど・・・。「贈る言葉」のメロディーが現れるところはなにかすごく良かった。こういう普通のメロディーが、歌うように弾ける、というのは実は難しいのではないか。違うかなあ。みんなやろうとしないだけなのか。
「明日に架ける橋」、私も試奏したことがある名編曲。悪くなかったけれど、もっと良く演奏できそうだなあ。
最後、クイーンの「I Was Born to Love You」。どうしてこんな曲をやろうと思うのだろう。この3部が全体そういう感じではあるけれど。ドライブ感、というのか、グルーブ、というのか、原曲も撥弦楽器なんだな、エレキだって、ギターだ。そして、たとえば、セロなんかは何かそんなのに近いと思っていた。頭おかしいんじゃない、と、言われそうだと思っていたけれど、そんな自意識過剰にならずにやりたきゃやればいいのに、ということか。


全国的にも、こんな演奏会はないのかなあ。ロック中心の3部、とか。
乱暴なようで、緩急なども考えられた、聞き飽きしないプログラム、無謀な試みと、果敢な挑戦と、自然な音楽の楽しみ。
いろいろなひとがいて、いろいろな団体があって、楽しいのはいいことだ。金子みすゞみたいだけど。
アンコールは「浪花節だよ人生は」だ。この曲が出たときは、だいっ嫌いだったなあ。
(読んでご不快になられた方がいらっしゃいましたら、深くお詫びいたします。)