「キャピタリズム」

「ボウリング・フォー・コロンパイン」、「華氏911」、「シッコ」で知られるドキュメンタリー映画監督、マイケル・ムーアの最新作、見てきました。
彼の作品をドキュメンタリーとして認めないという人もいたような気もする。皮肉たっぷりの教養バラエティーというか、演出過剰で偏向している報道番組となじられそうなようだけれど、見て感じられる感覚は、なぜみんなこんなことを声を大にして言わないのだろう、いつも見ているニュースって何だろう、というねじれた感覚。しかしある意味、一般常識のほうが狂っているわけで・・・。いや、私が偏向しているかもしれないわけだけれど・・・。


いわゆる格差拡大のシステムと、一般的な報道とは違う実質的なその結果(???・・・うまく書けない)をわかりやすく、印象的に表現している。
その拡大は自然におきたことではなく、意図的に、時には中間層、低所得者層、労働者などと言われるような人たちを実質的に騙したり、いつの間にか金融市場により多く資金が流れ込むような仕組みを作ったり、という記述のしかたが正確かどうかわからないけれど、まあ、そんなようなこと、それを歴史的経緯、資本システムを人々が受け容れてしまった流れ、さらに凶悪化する流れ、カーターが過去の人になりレーガンが広告塔になって制度が変わっていく、それから・・・サブプライム・ローン、金融破綻まで・・・金融破綻の末期まで、ちゃんと利益を得ているひとたち。


逆に、普通のひとたちの悲惨な例いくつか。
金利の変動をあまりはっきり知らせずにお金を貸し、金利が変わり、不動産の価格が下がり、払えなくなり、家もなくなり、借金は残る、で、保安官がやってきて、強制執行され、追い出される。
突然の工場閉鎖、知らされたのは3日前だと? 青天の霹靂、とはいえ暗雲は拡がっていたにしても・・・第二の家族のように思っていた仲間たちとの突然の別れ・・・。
銀行で働く夫が、スーパーマーケットではたらく奥さんが亡くなったあとに、会社が彼らに保険をかけていて、多額・・・巨額の保険金を会社が得ていたことがわかる。この保険は、「くたばった農民保険」と通称されて、いた、だと? 私たちがいろいろとものを買ってきたあの会社も、この会社も、そんな保険で利益を出し、その運営益を評価検討しているとか・・・。
逆の、マンション転がし、と、日本でなら言われる人の仕事ぶりと言動。彼が顧客に利益をもたらし彼自身も大変な利益を出していることは、誰かが多額の損失を被るそのままの結果なのだが、そんなことをそもそも考えないというようなことを話す彼に似た口ぶりで話す人は、日本の実業界にも、いやその辺の街角にも多そうだ。
このような場面はドキュメンタリーらしいものだ。


このような価値観、システムをそもそも認めるつもりがなかった人たち、この、ほとんどの人たちにとって最悪のシステムのまちがいを指摘し続けていると思われる人たちもスクリーンに現れる。
さらには、社員が全て経営者である企業、それがしっかりと利益を出し続けていること、そういう世界もあること・・・つまりは、良くある在り方は、必然ではないことの証左でもある。
間違いに気付いた人たちによって、変わっていることもある・・・オバマの当選。しかし、オバマ政権下のガイトナー財務長官の出自は・・・。しかしまた、「くたばった農民保険」は、なくなっていったという、ほっとするようなことも、ちらっと出てくる。


いろいろと思い出してみると万華鏡のような内容が、最終的にはまとまったイメージを残す。
私にはなじみ深い内容で、共感できるもので、それだけに私には衝撃は少なかったが、胸にストンと落ちる。
アメリカ合衆国の現状は日本よりもあからさまに非人間的なようにも思え、それも、良くまとめて再確認できた。
いちおうはどんな人が、どのようにこういうものに反論するのだろう、ということも気にかかる。
また、最後の彼の私たちへのメッセージ、それを、私も考えはする、しかし、どうしようか・・・。
(とりあえずはこんなものを書いてみた)

シッコ [DVD]

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