点景 2

ラジオを点けたら、ロバート・フリップのディシプリンのようなギターの音。ダスティン・ウォング（Dustin Wong）という人らしい。
解説に、「ミニマルでカラフルなレイヤーを描き出していく万華鏡のごときギター・パフォーマンス」なんて書いてあって、ふと、けっこう活躍している、大学のずっと後輩の作品を思い出した。音楽の雰囲気もそうだが、その後輩の作品はミニマルでカラフルな形態を反復したレイヤーが用いられて（？）おり、万華鏡のようでさえある。彼はダスティン・ウォングを知っているかどうかはわからないし、知っていたとしても作品への影響があるとは思えない。
しかし、いずれにしても美術との符号が感じられる音楽だと、解説を読む前から思えはじめていた。

ディシプリン・・・キング・クリムゾンのアルバム名でもあるし、フリップのユニット名でもあった、と思っていたが、そんな名前のユニットがあったかどうかは、ちょっと調べただけではわからなかった。
再結成、というか、新生クリムゾンというか、今はファンにあまり好まれていない時期になってしまったのかもしれないが、ポリリズムと言っていいのかどうかわからないが、少しずつずれていったり合ったり、ライヒの「クラッピング・ミュージック」と通じるような（他にもっと適当な例があるのだろうが、あまり詳しくない）、そうではないような反復の構造自体にはミニマル・ミュージックとの関連性は疑える。あるいは、アフリカ音楽の影響だったのかもしれないが。
フリップは現在65歳らしい。昨年活動を休止したとWikipediaには書いてある。それを最初読んだときはショックだった。

ダスティン・ウォング君の方は、反復や、音色もけっこうディシプリンに似ているようで、雰囲気が違う。クリムゾンの「フレーム・バイ・フレーム」には緊張感がみなぎっているのに対し、リラックスした感じ。レイ・ハラカミなどを思い出したが、見当違いか、どうか・・・。
世代の問題が重要なのかどうかはわからないが、ある人の受けた影響は無視できないかもしれない。
ダスティン・ウォング君は、もしかしたら私の後輩の美術作家と同じような世代ではないかと思ったが、わからない。

美術の世界の話になるが、ミニマル・アートという言葉があって、ソル・ルウィットという人が特徴的な気がするのだが、私が好きだったのはドナルド・ジャッド、で、彼自身はミニマルという言葉は使わず、スペシフィック・オブジェクトという言葉を使ったらしい。
ポスト・ミニマリズムという言葉がある。ネットでちょっと調べた限りではリチャード・セラなどを代表するというので驚いたが、エヴァ・ヘスの作品の画像を見ると納得できる。
この言葉を知ったのはポケット美術図鑑みたいな本でリチャード・タトルの作品の図版を見てからだった。その時に見た作品には「ポスト」といえどもミニマルという言葉から感じられる要素は残っている。その後なのか、そのほかの作品というだけなのか、ネットで見ることが出来た他の作品は、ミニマルという言葉は、形態についても、色彩についてもあてはまらなくなっている気がするが、何かささやかな作品といった佇まいはミニマル、だろうか。
タトルはフリップとさほど変わらない年齢のようなので、驚いた。
エヴァ・ヘスという人は、今日ちょっと調べた。生きていれば今年で76歳になっていたらしいが、34歳で亡くなっていたらしい。
リチャード・セラも同じくらいだが少し若いようで、存命らしいが、本当はこの項目にはあまりかかわりはない。
タトルはフリップとさほど変わらない年齢のようなので、驚いた。
エヴァ・ヘスの作品は、興味深かった。現在の日本の作家の作品であってもおかしくない。私は全国の動向はあまり知らないのだが、札幌にも似た感じの作品を作る作家はいそうだ。

美術や音楽の表現で、内容が問題になったり、ならなかったりする。形式が、（同）。
それらに関連性がないわけはないが、これらは内容の問題になるのだろうか。
緊張感の問題の他に、否定的な、批判的な表現と、ささやかな肯定的表現とのちがいが世代の違いとともに浮き上がってくる感じもする。
おそらくまだ20代の若い人たちの先駆としてヘスやタトルを思い出してしまって、古い世代としてジャッドが生きていたら83歳、ライヒ76歳、フリップなどを思い浮かべてしまう。ヘスに肯定性を見るのは見当違いだろうか。ジャッドの表現は肯定的かもしれない。
もちろん、一筋縄ではいかないだろうけれど。

Dreams Say, View, Create, Shadow Leads（ボーナス・トラック２曲収録/正方形紙ジャケット仕様/解説付き）

ディシプリン

Donald Judd

ライヒ:ベスト

Richard Tuttle: Triumphs

Eva Hesse: Sculpture (Jewish Museum)